
2025年3月24日
入札加点待ったなし!?中小企業向けSBT認証について解説
環境への取り組みが求められる中、企業としてどのように貢献できるか悩んでいませんか?特に中小企業では、資源や人員の制約があるため、脱炭素への取り組みを進めるのは容易ではありません。
そんな中、注目を集めているのが「SBT認証」です。
SBT認証は、温室効果ガスの排出削減目標が最新の科学に基づいていることを示す制度です。特に中小企業向けのSBT認証は、負担を抑えつつ環境貢献を証明できる手段として活用されています。
また、SBT認証を取得することで、取引先や顧客からの信頼を得るだけでなく、入札の加点や補助金の獲得にもつながる可能性があります。
ここでは、SBT認証の基本情報から、中小企業版の詳細、取得のメリット、具体的な申請手順までをわかりやすく解説します。
読み終えていただければ、SBT認証の重要性や取得の流れを理解し、自社の脱炭素への取り組みを一歩前進させるための具体的なアクションが見えてくるはずです。
目次
1.SBT認証とは?
SBT認証とは、「Science Based Targets」の略称で、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標が、最新の気候科学に基づいていることを認証する制度です。
パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑える」ための科学的根拠に基づいて、企業が自社の排出削減目標を設定し、その目標が適切であることを第三者機関が認証します。これにより、企業は持続可能な経営を推進し、気候変動対策に貢献することができます。
2.カーボンニュートラルとSBTの関係性は?

カーボンニュートラルとは、企業や国が排出する温室効果ガスの量を、植林や再生可能エネルギーの利用などで相殺し、実質的にゼロにすることを指しています。
カーボンニュートラルを達成するためには、SBTに基づいた削減目標を設定し、それに従って排出量を削減していきます。
つまり、SBTはカーボンニュートラルを達成するための具体的な目標設定と行動計画を提供する枠組みであり、企業が持続可能な未来に向けて確実に進むための指針となります。
3.SBT認証の中でも中小企業版について詳細を解説
SBT認証には、通常版と中小企業版の2種類あります。
主な違いは以下の表の通りです。
対象 以下を満たす企業
・従業員500人未満
・非子会社
・独立系企業特になし
目標年 2030年 公式申請年から5年以上先、15年以内の任意年
基準年 2018年 最新のデータが得られる年での設定を推奨
削減対象範囲 Scope1、2排出量 Scope1,2,3排出量。但し、Scope3がScope1~3の合計の40%を超えない場合には、Scope3目標設定の必要は無し
目標レベル 以下の2つのオプションから選択
■Well below 2℃
Scope1,2を30%削減、
Scope3を算定・削減
■1.5℃
Scope1,2を50%削減、
Scope3を算定・削減下記水準を超える削減目標を任意に設定
■Well below 2℃(必須)
少なくとも年2.5%削減
■1.5℃(推奨)
少なくとも年4.2%削減
費用 1回USD1,250(外税) 目標妥当性確認サービスはUSD4,950(外税)(最大2回の目標評価を受けられる)
以降の目標再提出は、1回USD2,490(外税)
承認までのプロセス 目標提出後、自動的に承認され、SBTi Webサイトに掲載 目標提出後、事務局による審査(最大30営業日)が行われる
事務局からの質問が送られる場合もある
認証までにかかる期間 最短6カ月 状況により変動あり
取得企業数 1293社 853社
引用元:SBT(Science Based Targets)について | 環境省
中小企業版は、中小企業の特性やリソースに合わせて柔軟性を持たせ、より実現可能な目標設定を支援します。また、中小企業版は、中小企業がSBTを採用する際の負担を軽減し、取り組みやすくすることを目的としています。
通常のSBTに比べると、企業の負担が軽くなっており、中小企業にとっても取り組みやすい内容となっています。
4.中小企業版SBT認証を取得することによるメリットは3つ
中小企業版SBT認証を取得することによるメリットを3つ紹介します。
①取引先からの要求に応えることができる
取引先からのアンケートの中に、SBT認証や脱炭素に向けた取り組みが項目に追加されてきています。これにより、継続した取引につなげることができます。
②企業信頼度が向上する
SBT認証や脱炭素の取り組みが外注先評価、そして補助金でも加点ポイントになるところが増えてきています。
認証取得により、企業の社会的責任に対する取り組みや透明性が証明され、顧客や取引先からの信頼を高めることができます。
③入札の加点
中小企業版SBT認証を取得することで、入札時に加点が行われる場合があります。これにより、入札競争での優位性が得られます。
5.認証までに必要な手順を5つのステップでご紹介
中小企業版SBT認証の認証までの各ステップの詳細をご説明します。
①申請要件を満たしているか確認する
②自社のCO2排出量を確認する
直接排出(Scope 1)と間接排出(Scope 2)、サプライチェーンなどのその他の間接排出(Scope 3)とは、以下の通りです。
・直接排出(Scope 1)
事業者自らによる燃料の燃焼や工業プロセスによる温室効果ガスの排出
・間接排出(Scope 2)
他者から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの排出
・その他の間接排出(Scope 3)
事業者の活動に関連する他社の温室効果ガスの排出
③目標を設定する
④申請
設定した目標をSBTiに申請します。
必要な書類(例:CO2排出量のデータ、目標設定の詳細)を準備し、SBTiの検証ポータルを通じて申請書を提出します。
⑤審査
最後に、SBTiによる審査が行われます。
各ステップをしっかりと踏むことで、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定し、認証を受けることができます。
6.SBT認証の今後の展望
SBT認証は、企業が科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定し、その達成を目指す取り組みを評価するものです。
今後の展望として、2050年までのカーボンニュートラル目標や各自治体の脱炭素の取り組みが進む中で、SBT認証の重要性はますます高まると予想されます。実際に、東京都、中部地方、近畿、中国、九州地方などを中心に7の地域にて入札の加点対象になってきています。
政府や自治体が掲げる脱炭素目標に対応するため、多くの企業がSBT認証を取得し、持続可能な経営を実現する動きが加速するでしょう。
また、消費者や投資家からの環境意識の高まりにより、SBT認証を持つ企業が競争優位性を持つことが期待されます。これにより、SBT認証の普及はさらに広がり、企業の持続可能な成長を支える重要な要素となるでしょう。
まとめ
SBT認証は、企業が科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するための枠組みです。
中小企業にとっても、SBT認証を取得することで、環境への責任を果たしつつ、競争力を高めることができます。
特に、2025年までのカーボンニュートラル目標や各自治体の脱炭素の取り組みが進む中で、SBT認証の重要性はますます高まっています。
これにより、中小企業も大企業と同様に持続可能な経営を実現し、社会的信用を向上させることが期待されます。
さらに、入札加点などの優遇措置も受けられる可能性があり、ビジネスチャンスの拡大にも寄与します。
今後、SBT認証の取得が中小企業にとっても標準的な取り組みとなるでしょう。持続可能な未来を目指し、積極的にSBT認証の取得を検討してみましょう。