2023年6月14日
企業がSDGsの認定を受ける流れとメリット・注意点を詳しく解説
企業がSDGsの認定を受けると、入札での加点、取引先や就活生にも選ばれる等のメリットがあります。企業がSDGsの認定を受けないことで、新たなビジネス展開への機会の損失やあらゆる面で置いていかれる可能性があるため、前向きにSDGsに取り組むことを検討していく必要があります。
目次
1.企業のSDGs認定・認証制度とは?
企業のSDGs認定・認証制度とは、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に積極的に取り組む企業を広く公表し、SDGsへの貢献を「見える化」するものです。
認定・認証はひとつではなく、国内だけでも約80もの登録制度があります。
県や市といった自治体が運営している認定制度もあれば、SDGsに関連する団体が運営している登録制度もあります。運営元によって難易度や申請方法も異なっています。
SDGs認定・認証制度に登録することで、SDGsの活動が明確にされ、消費者・顧客・取引先といった外部からの信頼を高めることにつながります。また、社会的・環境的な課題に取り組むことで、企業自身が持続可能な成長を実現し、ビジネス機会を拡大することができます。
(1)「国」によるSDGsの認定制度
国や日本政府が直接SDGsに取り組んでいることを認定する制度はありません。
国は直接的なSDGsの登録・認証は行わず、地方創生SDGsに積極的に取り組む事業者等を「見える化」するための仕組みづくりを支援するためのガイドラインを提供しています。
(2)「自治体」によるSDGsの認定制度
自治体によっては、独自に、企業や団体がSDGsに取り組んでいることを認定する制度があります。
この、県や市によるSDGsの認定制度に申し込み、SDGsに取り組んでいることが認められると、外部からの信頼を高めることができます。
また、自治体がSDGsの達成に向けた取り組みを進める上でも、企業や団体が積極的に認定制度に参加できるように、自治体にて工夫をしているところがあります。
例えば、SDGs認定に合格した企業は
- 地域金融機関からの金融支援(融資)を受けられる
- 入札制度における優先指名などの優遇を受けられる
- 総合評価落札方式において加点を受けられる
といったメリットが用意されている場合があります。
さらに、企業や団体が自治体のSDGsに関する課題やニーズを理解し、共同で取り組むことが可能になることも期待されます。
(3)「国連」が公認するSDGs認定制度はあるの?
国連が公認するSDGs認定制度はありません。
国連では、SDGsの達成に向けて、SDGs推進のための国際会議の開催や、SDGsのモニタリング・レポートの発表、パートナーシップの促進、啓発活動の実施等といった取り組みを行っています。
2.SDGsの認定を受ける3つのメリット
(1)PRにつながる
SDGsの認定登録をすることで企業イメージを向上させることができます。
SDGsに関連する取り組みや成果をホームページなどで報告することで、消費者や投資家などからの信頼度が高まることも期待できます。
SDGsの認定を受けた企業や団体は、その認定ロゴマークを使用することができるケースがあります。ホームページ、名刺、パンフレットなどにロゴマークを入れてアピールするのも効果があるでしょう。
ただし、SDGsに関する認定や認証は、単にPRのために取り組むものではなく、本格的にSDGsに取り組み、成果を出すことが求められます。本末転倒にならないよう注意しましょう。
(2)経営支援や助成金の対象になる
SDGsの認定は、企業や団体にとって経営支援や助成金の対象となることがあります。
例えば、経済産業省がSDGsの推進に資する事業を支援する「SDGs経営支援事業」を実施しています。
この事業は、SDGsを取り入れた経営戦略の策定や、SDGsに関連した商品・サービスの開発、SDGsに基づく報告書の作成などを支援するもので、事業を行う企業や団体が対象となっています。
また、自治体や各種団体が主催するSDGsに関するプロジェクトやイベントなどに参加することで、助成金を受け取ることができる場合もあります。
(3)入札の加点になる
SDGsの認定は、入札の際に加点の対象となることがあります。
例えば、政府調達案件においてSDGs認定登録が加点評価される場合があります。
具体的には、入札書類の中にSDGsに関する事項を明記することで、入札審査の際に評価の対象となることがあります。また、SDGsを達成するための方策や施策が盛り込まれた提案書や報告書を提出することで、加点の対象となることもあります。
同様に、企業間の取引においても、SDGsに関する取り組みが評価されることがあります。例えば、SDGsに関連する商品やサービスを提供する企業が、その取り組みを示す認証を取得している場合、取引先からの評価が高まり、競争力を高めることができるでしょう。
つまり、SDGsの認定を受けることで、入札や取引において加点の対象となり、競争力を高めたり、ライバル会社との差別化ができる場合があります。
3.SDGs認定を公的に行なっている都道府県・市
多くの県や市がSDGsの認定登録を行っていますがここでは5つの自治体を紹介します。
(1)横浜市
横浜市では、ヨコハマSDGsデザインセンターと連携し、SDGs達成に向けて取り組む企業・団体を「横浜市SDGs認証制度“Y-SDGs”」において認証しています。
各評価項目における取組状況に応じて、「最上位」「上位」「標準」の3つの区分で認証します。
なお、認証後は、マーク等を用いてSDGsの取組が認められたことをPRいただけるほか、認証制度を活用してSDGsに取り組んでいただくことにより、持続可能な経営・運営への転換、新たな顧客獲得、取引先の拡大や信頼度の向上につながることが期待されます。
また、「横浜市総合評価落札方式」の評価項目となっていることも特徴的です。
詳しい取り組みはこちらの公式HPよりご覧いただけます。
(2)川崎市
川崎市では、「かわさきSDGsパートナー」として、SDGsの達成に向けて取り組む企業・団体を認証する制度があります。
「登録」「認証」の2段階があり、「かわさきSDGsパートナー」および「かわさきSDGsゴールドパートナー」と呼称がついています。
・かわさきSDGsパートナー
登録した事業者には、登録証の発行、ロゴの使用の許可、「川崎市SDGsプラットフォーム」へ参加資格の付与、市ホームページでの事業者名の公表をすることができます。
・かわさきSDGsゴールドパートナー
認証された事業者には、認証書の発行、ロゴの使用の許可、市ホームページでの事業者名と取組内容の紹介、「川崎市SDGsプラットフォーム」へ参加資格の付与、融資制度による信用保証料補助などのメリットがあります。
詳しい取り組みはこちらの公式HPよりご覧いただけます。
川崎市SDGs登録・認証制度「かわさきSDGsパートナー」について(外部リンク)
(3)名古屋市
名古屋市では、「なごやSDGsグリーンパートナーズ」という認定登録制度があります。
従来のエコ事業所認定制度にSDGsの視点を加えたものです。
「登録エコ事業所」「認定エコ事業所」「認定優良エコ事業所」の3段階で取組むレベルに応じて、登録・認定され、最上位の「認定優良エコ事業所」の認定を受けると、認定証、認定プレートの交付、名古屋市の入札・契約制度における優遇措置、名古屋市公式ウェブサイトでの事業所名の商会と環境レポートの掲載等の待遇があります。
詳しい取り組みはこちらの公式HPよりご覧いただけます。
(4)鳥取県
鳥取県では、「とっとりSDGs推進企業認定制度」にてSDGsに関する取り組みを認定する制度が導入されています。
この制度は、県内企業の取組を、社会・経済・環境の3側面から評価し、認証するものです。
認定を受けた企業・団体は、鳥取県のウェブサイトや広報物において紹介され、さらに、とっとりSDGs推進イベントやセミナーなどに参加する機会が提供されます。
また、認証された企業は、低利率の制度融資やSDGs経営における各種課題の解決を支援する補助金、ビジネスマッチング支援などの支援を受けられるようになります。
詳しい取り組みはこちらの公式HPよりご覧いただけます。
(5)福岡市
福岡市では、Well-being向上とSDGsの達成に向けた取組みを実施/宣言する企業や団体を登録し応援する制度として、「福岡市Well-being&SDGs登録制度」が導入されています。
登録区分には、「マスター」と「パートナー」があり、取り組みの登録区分に応じて、申請期間内に専用フォームより申請の上、登録されます。
■パートナー
- 市ホームページ等で事業者名や取り組み事例を紹介
- 専用ロゴマークを企業PRに活用することが可能
- 関連セミナーなどの情報提供
■マスター
- パートナーの上記に加え、社会貢献優良企業優遇制度の認定対象
- 登録証及び専用ピンバッジの贈呈
- 市の融資制度の中で金利等が有利なメニューの利用
- 地域の金融機関による専用融資商品などの支援
詳しい取り組みはこちらの公式HPよりご覧いただけます。
福岡市Well-being&SDGs登録制度について(外部リンク)
4.SDGs認定を受ける流れ・スケジュール
SDGs認定を受ける流れ・スケジュールは、主に以下の手順で進めることができます。
(1)SDGsに関する方針や行動計画を策定する
SDGs認定を受けるには、事業活動におけるSDGsへの取り組み方針や具体的な行動計画を策定することが必要です。
その際、SDGsの目標やターゲットに沿った取り組みを明確にし、計画の進捗状況を定期的に評価・改善する仕組みを作ることが大切です。
(2)SDGs認定申請書を提出する
SDGs認定を受けるには、SDGs認定制度に対して申請書を提出する必要があります。
申請書には、事業活動におけるSDGsへの取り組み方針や具体的な行動計画、評価・改善の仕組みなどが含まれます。
(3)審査が行われる
SDGs認定申請書を提出すると、SDGs認定制度の審査委員会によって書類の審査が行われます。
審査の結果、認定基準を満たしている場合は、次のステップに進みます。場合によってはヒアリング審査が追加で行われることもあります。
(4)認定結果が発表される
SDGs認定制度の審査委員会によって最終的な認定結果が発表されます。
認定された場合は、SDGs認定マークを使用することができます。
以上が、SDGs認定を受けるための流れ・スケジュールです。SDGs認定制度は、地域によって異なる場合があるため、詳細はSDGs認定制度のウェブサイトなどで確認しましょう。
5.SDGs認定申請の注意点
(1)申請期間を確認する
多くの自治体や機関では、SDGs認定制度において申請期限が設定されており、期限を過ぎた場合は認定申請ができなくなります。
そのため、SDGs認定制度に関心を持ち、認定申請を検討している場合は、制度を実施している自治体や機関のウェブサイト等で期限を確認し、申請期限内に申請手続きを完了することが大切です。
(2)登録の要件を確認する
認定申請に必要な書類や要件等を確認しておくことが重要です。
認定制度によって必要書類や要件が異なるため、自治体や機関のウェブサイト等で詳細を確認し、必要書類や要件を準備することが必要です。
さらに、SDGs認定制度においては、認定基準に合致する取り組みを実施していることが重要です。
認定申請前には、認定基準を理解し、取り組みの評価を行うことが必要です。
6.認定後、更新は必要なのか?
自治体や機関のSDGs認定制度においても、認定の有効期間が設けられている場合があります。
有効期間が切れた場合は、再度申請を行う必要があるか、あるいは認定更新の手続きが必要になる場合があります。
例えば、上記であげた横浜市の「横浜市SDGs認証制度“Y-SDGs”」では、更新の手続きが必要となり、認証期間月までに更新申請書と目標設定シートを提出することが求められています。
そのため、SDGs認定を受けた後も、定期的に取り組みの進捗状況を確認し、必要に応じて報告書の提出や認定更新の手続きを行うことが求められる場合があります。
まとめ
SDGsに関する認定制度に登録・認定されると、PRや経営支援、助成金などのメリットがあります。
持続可能な社会を実現するためには、私たち一人一人がSDGsに取り組むことが必要です。
そのためにも、SDGsについて理解し、行動することが求められます。