2024年12月25日
SDGs経営とは?具体的な取り組みや課題を解説
目次
1.「SDGs経営」とは?
「SDGs経営」とは、企業が自身のビジネス活動を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する経営スタイルを指します。
具体的には、製品やサービスの開発、生産、販売などのビジネスプロセス全体を通じて、環境問題や社会問題の解決に取り組むことを意味します。
これにより、企業は社会的な価値を創出しながら、経済的な利益も追求することが可能となります。
2.SDGs経営のメリット
SDGs経営を行うことによるメリットは以下5点が挙げられます。
- 企業のブランドイメージの向上
- 新たな顧客の獲得や既存顧客のロイヤルティ向上
- 従業員のモチベーション向上
- 採用力の強化
- 投資家からの評価向上
逆に言えば、SDGsに取り組んでいない企業は、社会の要求に応えていないと見なされる可能性もあります。
3.SDGs経営の課題と解決策
SDGs経営に取り組む際には、以下のような課題が出てくることがあるでしょう。
- SDGsの理解が難しい
- リソースの確保
- モニタリングと評価の実施
解決策を詳しく見ていきましょう。
(1)SDGsの理解が難しい
SDGsの17の目標と169のターゲットを全て理解し、自社のビジネスとどのように関連付けるかを考えるのは大変な作業です。
SDGsの目標とターゲットを理解するためには、専門家の意見を聞いたり、他の企業の事例を参考にしたりすることが有効です。
(2)リソースの確保
SDGsの取り組みには人的、時間的、財政的なリソースが必要です。特に中小企業ではこれらのリソースが限られているため、取り組みが難しい場合があります。
リソースが限られている場合は、最初から全ての目標に取り組むのではなく、自社のビジネスと最も関連性の高い目標から取り組むことを考えると良いでしょう。
(3)モニタリングと評価の実施
SDGsの取り組みの効果を測定し、評価するための具体的な指標や方法が必要です。
SDGsの取り組みの効果を測定するためには、具体的な目標を設定し、それに向けて進捗を定期的にチェックすることが重要です。また、外部の専門家による評価を受けることも有効です。
4.SDGsを経営に導入する5ステップ
SDGs経営は、以下のステップで進めていきましょう。
- SDGsの理解
- 自社のビジョンとの整合性確認
- 具体的なアクションプランの策定
- 実行と評価
- レポーティング
(1)SDGsの理解
まずはSDGsの17の目標と169のターゲットを理解し、それぞれがどのような問題を解決しようとしているのかを把握します。
(2)自社のビジョンとの整合性確認
次に、自社のビジョンやミッションとSDGsの目標がどのように整合しているのかを確認します。これにより、自社がどのSDGsに対して貢献できるのかを明確にすることができます。
(3)具体的なアクションプランの策定
自社が取り組むSDGsに基づいて、具体的なアクションプランを策定します。これには、目標設定、KPIの設定、進捗管理などが含まれます。
(4)実行と評価
策定したアクションプランを実行し、定期的に評価と改善を行います。これにより、SDGs経営の進捗を確認し、必要に応じてアクションプランを修正します。
(5)レポーティング
SDGs経営の取り組みと成果をHPなどで定期的に公表します。これにより、ステークホルダーとの信頼関係を維持し、自社のSDGs経営の進捗を共有します。
5.SDGs経営の事例
SDGs経営は大きく分けて2種類あると言えるでしょう。
(1)事業・サービスそのものがSDGsにつながっているケース
事業やサービスそのものがSDGsにつながっているとは、その事業やサービスがSDGsの目標達成に寄与している、つまり社会や環境の持続可能性に貢献しているという意味です。
具体的には、環境負荷の低減、貧困の解消、教育の機会均等、ジェンダー平等の推進など、その事業やサービスがSDGsの17の目標のいずれかに対応している状態を指します。
(2)企業活動でSDGsに貢献するケース
社内で節水、節電、ペーパーレス、公共交通機関の利用に努めたり、ジェンダー平等に貢献するために女性を役職に積極登用したりすることです。事業やサービスそのものでの貢献ではなく、企業活動を行う中でSDGsに貢献できることを探していくケースです。
6.SDGsを従業員に教育・浸透させたい
SDGsを従業員に浸透させるためには、まずは経営層がSDGsの理解を深め、その重要性を全社に伝えることが必要になってきます。
経営目標とSDGsを絡めたり、全社的な集まりでSDGs経営を宣言するのもよいでしょう。
また、SDGsに関する研修や勉強会を定期的に開催し、従業員一人ひとりがSDGsについて理解を深める機会を提供することも重要です。さらに、SDGs関連業務やプロジェクトに従業員を参加させることで、SDGsを具体的に体感することができます。
従業員がSDGsを自分事として捉えることができるように、会社側も工夫をしていきましょう。
7.中小企業にとってのSDGs経営のポイント
SDGs経営を推進する上での大企業と中小企業の違いは、大企業は既にCSRやESGの推進を行っていることが多く、SDGs経営の基盤が整っていることが多いです。
一方、中小企業やベンチャー企業はSDGs経営をこれから始めるという状況が多く、その規模が小さいためにどのようにSDGs経営に取り組むべきかが分からないこともあります。そこで、中小企業がSDGs経営を進めるための重要なポイントを以下に示します。
(1)目標を絞る
中小企業は大企業と比べてリソースが限られています。そのため、取り組むべきSDGsの目標を絞り込み、限られたリソースでも効率的に活動を進めることが重要です。
(2)地域との連携をはかる
中小企業は地域密着型のビジネスを展開していることが多いため、地域との連携を深めることでSDGsの取り組みを進めやすくなります。
(3)継続して取り組む
SDGsの取り組みは一度で終わりではなく、継続的に行うことが求められます。導入しただけで満足してしまうケースがありますが、PDCAサイクルを回し、途切れることなく実行し続けることが重要です。
8.新型コロナウイルスによるパンデミックがSDGsに与えた影響
SDGsは2016年から始まり、目指す達成年2030年まであと5年となりました。
新型コロナウイルスの影響で、世界中で雇用の喪失や貧困率の増加など、多くの問題が表面化しています。
日本でも、パンデミックにより貧困問題が一層深刻化しています。ハローワークの調査によれば、パンデミック以降、日本では約8万人が失業したとされています。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大以降、リモートワークやテレワークが広まり、仕事や交流の場がデジタル化しました。
デジタル技術の進歩とITインフラの整備により、キャッシュレスやペーパーレスなどの生活習慣の見直しも進んでいます。しかし、一方で「情報格差」が社会問題として浮上してきています。
これからの社会では、コロナ禍を通じて明らかになった様々な課題を解決し、SDGsの達成に向けて進むことが求められています。
9.「ESG」と「SDGs」の違いは?
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、これらの観点から企業を評価する投資スタイルを指します。
ESG投資は、社会や環境への配慮を重視する一方で、高い財務リターンと低い投資リスクをもたらすと認識されています。
一方、SDGsは、現在から未来にかけてのステークホルダー(顧客、株主など)に対する新たなビジネスチャンスを示しています。
SDGsは世界共通の目標であるため、企業の活動の意義を全世界に共有する手段となり得ます。
ESGとSDGsは、どちらも企業の持続可能性に関連しているため、その違いが理解しにくいこともあります。
しかし、ESGは企業の現状に対するステークホルダーの評価を示し、SDGsは企業の未来に向けた活動を示すと考えると、その違いが明確になります。概念的には、ESGはSDGsの一部と考えることができます。
10.「CSR」と「SDGs」の違いは?
CSR(企業の社会的責任)とSDGs(持続可能な開発目標)は、どちらも企業が社会的な課題に取り組むための枠組みですが、その目指す方向性や視点に違いがあります。
CSRは、企業が自身のビジネス活動を通じて社会的な課題を解決することを目指す考え方で、主に企業の社会的責任を果たすための活動を指します。
これに対して、SDGsは国連が定めた17の目標と169のターゲットからなる国際的な目標で、企業だけでなく、国や地方自治体、NPOなど、社会全体で取り組むべき課題を示しています。
CSRは企業の自己決定による活動が中心であるのに対し、SDGsは全世界が共通で目指す目標であり、その達成のためには多様なステークホルダーとの協働が求められます。
また、CSRは主に企業のリスク管理や社会貢献活動に焦点が当てられがちですが、SDGsは企業のビジネスチャンスを見つけ、新たな価値を創造する視点も含まれています。
まとめ
SDGs経営とは、企業が自らの事業活動を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与する行動を実施することを指します。製品やサービスの創造から販売に至るまでの全ビジネスプロセスを通じて、環境や社会の課題解決に向けた取り組みを行うことを意味します。