2024年8月20日
健康経営優良法人とは?申請方法・認定基準を徹底解説!
健康経営優良法人とは、従業員の健康を重視し、その推進に取り組む企業を認定する制度です。この制度は経済産業省が推進しており、認定を受けるためには、人事労務回りを整備し、働く環境を整える取り組みが必要です。
健康経営優良法人に認定されることで、企業の社会的信頼性向上や従業員のモチベーション向上といった効果が期待されます。
目次
1.健康経営優良法人認定制度とは
健康経営優良法人とは、経済産業省が推進している従業員の健康管理に積極的に取り組む企業に与えられる認定です。
健康診断の実施や健康づくりの取り組み、ストレスチェックの実施など、従業員の健康を維持・向上させるための取り組みが評価されます。
この認定を受けることで、企業の社会的信頼性が向上し、従業員のモチベーション向上や生産性向上、一部自治体では公共調達・公共工事の入札時における加点や、補助金の加点、金融機関・保険会社による優遇制度につながる等のメリットがあります。
2.健康経営優良法人の対象となる法人
健康経営優良法人の認定は、多様な組織が対象となります。
これには一般企業だけでなく、弁護士法人、特定NPO、医療法人、社会福祉法人などが含まれます。ただし、申請にはいくつかの条件があります。
まず、申請する法人は少なくとも1人以上の従業員を雇用している必要があります。経営トップや代表者のみで構成される1人法人、または法人格を持たない個人事業主や任意団体は申請資格がありません。
【健康経営優良法人を取得可能な組織例】
- 会社法に基づく会社(株式会社、有限会社など)
- 士業法人(弁護士法人、監査法人など)
- 特定非営利活動法人(特定NPO)
- 医療法人、社会福祉法人
- 健保組合などの保険者
- 社団法人、財団法人、商工会議所・商工会
- 公法人、特殊法人(地方公共団体、独立行政法人など)
- その他、国内法に基づく法人(保険業法、中小企業等協同組合法など)
このように、健康経営優良法人の認定は幅広い組織が対象となっており、健康経営の推進を目指す法人にとって有益な認定となります。
3.健康経営優良法人の認定基準
健康経営優良法人は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」があり、どちらで申請をするかは業種、従業員数や資本金によって分類されます。
また、従業員数が大規模法人部門に該当し、資本金が中小規模法人部門に該当する場合は大規模法人部門、中小規模法人部門のいずれか選択し、申請することが可能です。
(1)大規模法人部門
【「会社法上の会社等」または「士業法人」の場合】
卸売業 :従業員数が101人以上、資本金または出資金額が1億円以上
小売業 :従業員数が51人以上、資本金または出資金額が5000万円以上
サービス業 :従業員数が101人以上、資本金または出資金額が5000万円以上
製造業その他:従業員数が301人以上、資本金または出資金額が3億円以上
【「会社法上の会社等」または「士業法人」以外の場合】
特定非営利活動法人 :従業員数が101人以上
医療法人、社会福祉法人、健保組合等保険者:101人以上
社団法人、財団法人、商工会議所・商工会 :101人以上
公法人、特殊法人(地方公共団体、独立行政法人、公共組合、公団、公社、事業団等):301人以上
【その他、国内法(保険業法、中小企業等協同組合法、信用金庫法、私立学校法、宗教法人法 等)に基づく法人の場合】
卸売業 :従業員数が101人以上
小売業 :従業員数が51人以上
サービス業 :従業員数が101人以上
製造業その他:従業員数が301人以上
(2)中小規模法人部門
【「会社法上の会社等」または「士業法人」の場合】
卸売業 :従業員数が1名以上100人以下、資本金または出資金額が1億円以下
小売業 :従業員数が1人以上50人以下、資本金または出資金額が5000万円以下
サービス業 :従業員数が1人以上100人以下、資本金または出資金額が5000万円以下
製造業その他:従業員数が1人以上300人以下、資本金または出資金額が3億円以上
【「会社法上の会社等」または「士業法人」以外の場合】
特定非営利活動法人 :従業員数が1名以上100人以下
医療法人、社会福祉法人、健保組合等保険者:従業員数が1名以上100人以下
社団法人、財団法人、商工会議所・商工会 :従業員数が1名以上100人以下
公法人、特殊法人(地方公共団体、独立行政法人、公共組合、公団、公社、事業団等):従業員数が1名以上300人以下
【その他、国内法(保険業法、中小企業等協同組合法、信用金庫法、私立学校法、宗教法人法 等)に基づく法人の場合】
卸売業 :従業員数が1名以上100人以下
小売業 :従業員数が1人以上50人以下
サービス業 :従業員数が1名以上100人以下
製造業その他:従業員数が1名以上300人以下
4.ホワイト500とブライト500とは?
ホワイト500とブライト500とは健康経営優良法人を認定した企業の中でより良い取り組みをしていると認められた上位500社に認められる称号です。
(1)ホワイト500
ホワイト500とは「大規模法人部門」の健康経営優良法人のうち上位500社の企業に認められる称号です。
(2)ブライト500
ブライト500とは「中小規模法人部門」の健康経営優良法人のうち上位500社の企業に認められる称号です。
5.認定で得られる6つのメリット
(1)職場環境を整えることができる
人事労務周りがメインの認定のため現状把握をすることで、職場環境の改善点や新たな気づきが多いです。
認定を活用して人事労務周りを整備する企業も多々います。
普段ではあまり目を向けて改善を進めない人事労務周りを整備することで企業イメージ向上にもつながります。
(2)採用活動でのアピール材料になる
新卒採用、中途採用問わずに企業選びの決め手に「健康経営優良法人」があがっている傾向があり、約6割の求職者が企業選びの決め手にしているというデータも出ています。
また、中途採用については転職サイトで特集が組まれていることも見受けられます。
認定をすることで認定マークが付与されるため働く環境や従業員に対しての考えを見える化することができ、求職者へのアピールにも繋がります。
(3)公共調達・公共事業の入札での加点対象
地域によっては公共調達や公共事業の入札においても大きなメリットをもたらします。この認定を持つ企業は入札時に加点される対象となることがあります。
健康経営を行っている企業は従業員の生産性が高く、長期的に安定した業務遂行が期待できるため、公共事業においてもその安定性が評価されるのです。
このように、健康経営優良法人の認定は、ただ従業員の福利厚生を向上させるだけでなく、企業のビジネスチャンスを広げる効果も持っています。
現状、入札加点地域が増加傾向にありますので早めに取り組み、自社の地域で加点対象になる前から取り組みはじめ、認定を目指し入札加点になった時に備えている企業も増加してきています。
(4)補助金の加点対象
現状「健康経営優良法人」を認定することで下記の補助金を対象に採択率が上がります。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- IT導入補助金
- 事業継承・引継ぎ補助金
- Go-tech補助金
- 事業再構築補助金
(5)保険料の割引
健康経営優良法人に認定された企業は、健康保険組合や生命保険会社からの保険料が割引されることがあります。
これにより、企業はコスト削減を実現し、さらに従業員の健康維持・増進に対する投資を続けることが可能となります。
(6)金利の優遇
健康経営優良法人の認定を受けることで、金融機関からの融資において金利の優遇を受けることができます。
健康経営に取り組むことで、企業の信用力が向上し、金融機関からの評価も高まるため、低金利での融資を受けることが可能となります。
さらに、会社単位だけでなく従業員の住宅ローンや個人ローンを組んでいる際に金利引き下げが受けられる制度を用意している銀行もあります。
6.健康経営優良法人認定の注意点・デメリット
健康経営優良法人の認定を受けることは、企業や組織にとって多くのメリットをもたらしますが、その一方で、注意すべき点やデメリットも存在します。
(1)手間、時間がかかる
健康経営優良法人の認定を受けるためには、詳細な申請書類の作成が必要です。
これには、従業員の健康管理に関する具体的な取り組みや成果を示すデータの収集、分析、報告が含まれます。
これらの作業は、通常の業務に加えて行うため、担当者にとって大きな負担となることがあります。
さらに、認定のための基準を満たすためには、企業全体での健康経営の推進が求められます。
これには、経営トップのコミットメントや従業員全体への啓発活動、健康管理プログラムの実施など、多岐にわたる取り組みが必要です。
これらの取り組みを計画し、実行し、評価するプロセスには相当な時間がかかります。
また、認定を受けるための準備期間中に、他の業務が滞る可能性も考慮しなければなりません。
特に中小企業においては、リソースが限られているため、健康経営の推進と通常業務のバランスを取ることが難しい場合があります。
(2)毎年更新をしないと認定を維持できない
認定を維持するためには、毎年の更新が必要となります。
更新を怠ると認定が失効し、これまでの取り組みが無駄になる可能性があります。認定の失効は、企業の信頼性やブランドイメージに影響を与えることがあるため、注意が必要です。
特に公共調達・公共工事の加点評価などの取得目的がある場合、認定を執行しないように注意が必要です。
7.健康経営優良法人の申請・認定スケジュール
健康経営優良法人の認定を目指す企業や団体にとって、申請・認定スケジュールを把握することは非常に重要です。
申請については毎年申請期間が決められています。
申請期間は毎年8月から10月までです。
この期間中に企業は申請を行う必要があります。申請書類には、企業の健康経営に関する取り組みや成果を詳細に記載する必要があり、事前に十分な準備が求められます。特に、健康経営の実績や具体的な施策についての証拠資料を揃えることが重要です。
申請が完了すると、審査が行われ、翌年の3月に認定結果が発表されます。
どの企業も共通でこのスケジュールは決まっているため計画的に進めることが成功のカギとなります。
8.健康経営優良法人の申請の流れ
(1)スケジュール計画を立てる
先ほども記載の通り、申請期間と認定時期が決められているので逆算してスケジュールを組む必要があります。
そのためにはまず申請するために必要な書類やデータ、エビデンス資料などをリストアップし、それぞれの準備にかかる時間を見積もる必要があります。
見積もった後、各準備項目に対して担当者を決め、役割分担を明確にします。
役割分担ができれば定期的な進捗確認のミーティングを設定し、計画通りに進んでいるかをチェックします。
これらのスケジュール計画をしっかりと立てることで、健康経営優良法人の認定取得に向けた準備を効率的に進めることができます。
(2)現状把握をする
申請までの流れの中で現状把握は非常に重要なステップです。
まずは、申請項目に沿って現状何ができており、何ができていないのかを把握することが必要です。
従業員の健康診断結果の分析や申請項目などを通じて、現状を客観的に把握しましょう。
また、組織の健康経営に関する方針や取り組み、課題なども整理し、現状を明確に把握することで、次の段階での計画立案や施策の検討に役立ちます。
(3)現状を元に計画を立て実行する
申請までの流れの一環として、現状を元に計画を立て実行することが重要です。
従業員の健康状態や組織の健康経営に関する現状を詳細に把握した上で、健康経営の推進に向けた具体的な計画を立て、実行に移していきます。
計画の立案には、従業員や関係者とのコミュニケーションが欠かせません。
そして、計画を実行する際には、関係者の協力や理解を得ながら、段階的に進めていくことが大切です。
計画の実行には時間がかかることもありますが、着実に進めていくことで、健康経営の取り組みを成功に導くことができます。
(4)実行を元に申請書を作成する
現状把握、現状を元に計画を立てることができれば次は申請書の作成です。申請書には、具体的なデータやエビデンスを添付することが求められます。例えば、健康診断の受診率やメンタルヘルス対策の実施状況、働き方や残業時間の管理などです。
また、申請書の作成にあたっては、各項目の記載内容が一貫性を持ち、論理的に構成されていることが重要です。曖昧な表現や不明瞭なデータは避け、具体的かつ明確な情報を記載する必要があります。
さらに、申請書の作成過程では、社内の関係者と密に連携し、必要な情報を収集・共有することが不可欠です。
最後に、申請書の提出前には、内容の最終確認を行い、誤字脱字や記載漏れがないかをチェックが必須です。
(5)申請作業を行う
申請ができる時期(8月中旬頃〜10月中旬頃)になりましたら「ACTION!健康経営」という専用サイトから申請作業を行います。
電子申請が可能となっていますので、作成した申請書をアップロードしていただくと申請の手続きは終了となります。
申請期間内であれば何回でもアップロードを上書きすることができるので、アップロード後に見直した結果修正点があった場合、修正した最新の申請書をアップロードすれば上書きされます。
(6)認定完了
申請が完了すれば、健康経営優良法人認定事務局による審査が実施され、問題がなければ日本健康会議による認定がおこなわれます。
認定は毎年3月に発表があります。
その後、翌年の3月31日まで健康経営優良法人の有効期間となります。
次年度以降も認定を維持する場合、次の年度の健康経営優良法人の申請を再度実施し、認定を更新をする必要があります。
まとめ
「健康経営優良法人」とは、企業が従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践していることを評価する制度です。
この制度は、従業員の健康増進を図る取り組みを積極的に行っている企業を認定し、その取り組みを社会に広く知らせることを目的としています。
健康経営優良法人に認定されることで、企業は社会的な信頼を高めるとともに、従業員の健康意識の向上や生産性の向上を図ることができます。
申請は以下6ステップで行うことができます。
①計画を立てる→②現状把握→③計画を立て実行→④申請書作成→⑤申請作業→⑥認定完了