2024年9月30日
健康経営優良法人の中小規模法人部門とは?概要や認定要件を徹底解説!
健康経営優良法人の中小規模法人部門は、業種や従業員数、資本金で条件が決められています。
また、健康経営優良法人の中小規模法人部門と大規模法人部門では認定要件が異なります。
まずは自社がどの部門に当てはまるか把握をした上で取り組み出すことをおすすめします。
目次
- 1.健康経営優良法人認定制度とは
- 2.健康経営優良法人の部門とは
- 3.健康経営優良法人に認定されるメリット
- 4.健康経営優良法人認定のスケジュール
- 5.健康経営優良法人(中小規模法人部門)の概要
- 6.健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件
- (1)健康宣言の社内外への発信及び経営者自身の健診受診
- (2)健康づくり担当者の設置
- (3)(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供
- (4)健康経営の具体的な推進計画
- (5)①従業員の健康診断の実施(受診率実質100%)
- (6)②受診勧奨の取り組み
- (7)③50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
- (8)④管理職または従業員に対する教育機会の設定
- (9)⑤適切な働き方実現に向けた取り組み
- (10)⑥コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み
- (11)⑦私病等に関する復職・両立支援の取り組み(⑬以外)
- (12)⑧保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
- (13)⑨食生活の改善に向けた取り組み
- (14)⑩運動機会の増進に向けた取り組み
- (15)⑪女性の健康保持・増進に向けた取り組み
- (16)⑫長時間労働者への対応に関する取り組み
- (17)⑬メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
- (18)⑭感染症予防に関する取り組み
- (19)⑮喫煙率低下に向けた取り組み
- (20)受動喫煙対策に関する取り組み
- (21)健康経営の取り組みに対する評価・改善
- 7.まとめ
1.健康経営優良法人認定制度とは
健康経営優良法人とは、経済産業省が推進している従業員の健康管理に積極的に取り組む企業に与えられる認定です。
健康診断の実施や健康づくりの取り組み、ストレスチェックの実施など、従業員の健康を維持・向上させるための取り組みが評価されます。
この認定を受けることで、企業の社会的信頼性が向上し、従業員のモチベーション向上や生産性向上、一部自治体では公共調達・公共工事の入札時における加点や、補助金の加点、金融機関・保険会社による優遇制度につながる等のメリットがあります。
2.健康経営優良法人の部門とは
健康経営優良法人は中小規模法人部門と大規模法人部門の2つの部門に分かれています。まずは自社がどの部門に当てはまるかを確認しましょう。
(1)中小規模法人部門
以下の条件にあてはまる場合、「中小規模法人部門」です。
【「会社法上の会社等」または「士業法人」の場合】
卸売業 | 従業員数が1名以上100人以下、 資本金または出資金額が1億円以下 |
小売業 | 従業員数が1人以上50人以下、 資本金または出資金額が5000万円以下 |
サービス業 | 従業員数が1人以上100人以下、 資本金または出資金額が5000万円以下 |
製造業その他 | 従業員数が1人以上300人以下、 資本金または出資金額が3億円以上 |
【「会社法上の会社等」または「士業法人」以外の場合】
特定非営利活動法人 | 従業員数が1名以上100人以下 |
医療法人、社会福祉法人、 健保組合等保険者 | 従業員数が1名以上100人以下 |
社団法人、財団法人、 商工会議所・商工会 | 従業員数が1名以上100人以下 |
公法人、特殊法人 (地方公共団体、独立行政法人、 公共組合、公団、公社、事業団等) | 従業員数が1名以上300人以下 |
【その他、国内法(保険業法、中小企業等協同組合法、信用金庫法、私立学校法、宗教法人法 等)に基づく法人の場合】
卸売業 | 従業員数が1名以上100人以下 |
小売業 | 従業員数が1人以上50人以下 |
サービス業 | 従業員数が1名以上100人以下 |
製造業その他 | 従業員数が1名以上300人以下 |
(2)ブライト500
ブライト500とは中小規模法人部門の上位500社に付加され、中小規模法人部門の中でも優れた取り組みを実施している企業に与えられる称号です。
ただ、ブライト500の基準は明確にされていないため、他社の取り組みなども見比べながらよりよい取り組みや活動を取り入れていく必要があります。
(3)大規模法人部門
以下の条件に当てはまる場合、「大規模法人部門」となります。
【「会社法上の会社等」または「士業法人」の場合】
卸売業 | 従業員数が101人以上、 資本金または出資金額が1億円以上 |
小売業 | 従業員数が51人以上、 資本金または出資金額が5000万円以上 |
サービス業 | 従業員数が101人以上、 資本金または出資金額が5000万円以上 |
製造業その他 | 従業員数が301人以上、 資本金または出資金額が3億円以上 |
【「会社法上の会社等」または「士業法人」以外の場合】
特定非営利活動法人 | 従業員数が101人以上 |
医療法人、社会福祉法人、健保組合等保険者 | 従業員数が101人以上 |
社団法人、財団法人、商工会議所・商工会 | 従業員数が101人以上 |
公法人、特殊法人 (地方公共団体、独立行政法人、 公共組合、公団、公社、事業団等) | 従業員数が301人以上 |
【その他、国内法(保険業法、中小企業等協同組合法、信用金庫法、私立学校法、宗教法人法 等)に基づく法人の場合】
卸売業 | 従業員数が101人以上 |
小売業 | 従業員数が51人以上 |
サービス業 | 従業員数が101人以上 |
製造業その他 | 従業員数が301人以上 |
(4)ホワイト500
ホワイト500とは大規模法人部門の上位500社に付加され、大規模法人部門の中でもより優れた取り組みを実施している企業に与えられる称号です。
ただ、ブライト500同様ホワイト500の基準も明確にされていないため、他社の取り組みなども見比べながらよりよい取り組みや活動を取り入れていく必要があります。
こちらは認定企業発表後にその年の健康度調査フィードバックシートというものが公表され、そこにホワイト500を与えられた企業の取り組み偏差値や具体的な活動内容が記載されているので、参考にしながら進め、目指すことも可能です。
(5)健康経営銘柄
東京証券取引所の上場企業の中から、健康経営に関する取り組みが特に優れた企業が選定されます。
経済産業省は東京証券取引所と共同で従業員等の健康管理を経営的な視点から戦略的に取り組んでいる上場企業を「健康経営銘柄」として選定しています。
長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家に対して、魅力ある企業としてアピールすることができます。
3.健康経営優良法人に認定されるメリット
健康経営優良法人に認定されるメリットは大きく分けて6つあります。
- 職場環境を整えることができる
- 採用活動でのアピールができる
- 入札での加点対象になっている
- 補助金の加点対象になっている
- 保険料の割引対象になる
- 金利の優遇の対象になる
各メリットの詳細は下記の記事で記載していますので、ぜひご一読ください。
4.健康経営優良法人認定のスケジュール
スケジュールについては毎年申請期間と認定時期は固定で決まっています。
- 申請期間:毎年8月~10月
- 認定時期:翌年の3月
まずは毎年の申請期間に向けて準備を進めていく必要があります。
具体的なスケジュールは下記の図の通りになっています。
5.健康経営優良法人(中小規模法人部門)の概要
健康経営優良法人の中小規模法人部門を認定するためには下記条件を満たす必要があります。
また、「①~③のうち2項目以上」「④~⑦のうち1項目以上」「⑧~⑮のうち4項目以上」という基準も設けられています。
詳しくはこの後各項目について解説いたします。
※健康経営優良法人2024の認定要件をもとに記載しています
6.健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件
大項目 | 中項目 | 小項目 | 評価項目 | 認定要件 | |
---|---|---|---|---|---|
1.経営理念(経営者の自覚) | 健康宣言の社内外への発信及び経営者自身の健診受診 | 必須 | |||
2.組織体制 | 健康づくり担当者の設置 | 必須 | |||
(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供 | 必須 | ||||
3. 制 度 ・ 施 策 実 行 | (1)従業員の 健康課題の把握と 必要な対策の検討 | 健康課題に基づいた 具体的な目標の設定 | 健康経営の具体的な推進計画 | 必須 | |
健康課題の把握 | ①定期健診受診率(実質100%) | 左記 ①~③のうち2項目以上 | ブ ラ イ ト 5 0 0 は 左 記 ① ~ ⑮ の う ち 1 3 項 目 以 上 |
||
②受診勧奨の取り組み | |||||
③50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施 | |||||
(2)健康経営の 実践に向けた 土台づくり | ヘルスリテラシーの向上 | ④管理職又は従業員に対する教育機会の設定 | 左記 ④~⑦のうち1項目以上 |
||
ワークライフバランスの推進 | ⑤適切な働き方実現に向けた取り組み | ||||
職場の活性化 | ⑥コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み | ||||
仕事と治療の両立支援 | ⑦私病等に関する両立支援の取り組み(⑬以外) | ||||
(3)従業員の心と 身体の健康づくりに 関する具体的対策 | 具体的な健康保持・増進施策 | ⑧保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み | 左記 ⑧~⑮のうち4項目以上 |
||
⑨食生活の改善に向けた取り組み | |||||
⑩運動機会の増進に向けた取り組み | |||||
⑪女性の健康保持・増進に向けた取り組み | |||||
⑫⾧時間労働者への対応に関する取り組み | |||||
⑬メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み | |||||
感染症予防対策 | ⑭感染症予防に関する取り組み | ||||
喫煙対策 | ⑮喫煙率低下に向けた取り組み | ||||
受動喫煙対策に関する取り組み | 必須 | ||||
4.評価・改善 | 健康経営の取り組みに対する評価・改善 | 必須 | |||
5.法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)※誓約書参照 | 定期健診を実施していること、 50人以上の事業場においてストレスチェックを実施していること、 労働基準法または労働安全衛生法に係る違反により送検されていないこと、等 | 必須 |
(1)健康宣言の社内外への発信及び経営者自身の健診受診
この項目は必須項目です。
まず、健康宣言とは健康保険の組合や協会へ今から健康経営に取り組むことを宣言する制度のことです。
各健康保険の組合や協会へ健康宣言を実施した後、社内外へ発信するまでが要件となっています。
例:社内での掲示、HPでの公表など
また、経営者自身に健康診断を受診していただくことも要件となっています。
(2)健康づくり担当者の設置
この項目も必須項目となっています。
健康経営を推進していく上での担当者を決めていただく必要があります。
(3)(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供
この項目も必須項目となっています。
健康診断を受診した後の結果を、健康保険の組合や協会へ提供していただく必要があります。
ただ、現時点で自動的に検診先から組合や協会などに届いている場合もありますので現状の結果提供状況は
どうなっているかの確認をしていただくのがいいかと思います。
(4)健康経営の具体的な推進計画
この項目も必須項目となっています。
健康経営に取り組むうえで具体的な数値目標を立てる必要があります。
下記の項目をもとに現状を洗い出し計画することが必要です。
・課題、数値目標、達成期限、推進計画
(5)①従業員の健康診断の実施(受診率実質100%)
健康診断受診率100%が求められています。
必ず全従業員に年に1回健康診断を受診していただきましょう。
(6)②受診勧奨の取り組み
健康診断の結果、再検査や精密検査といった結果が出た場合
会社として推奨している取り組みはあるかどうかを問われています。
(7)③50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
50人未満の事業所でもストレスチェックを実施しているかどうかが問われています。
(8)④管理職または従業員に対する教育機会の設定
健康経営やヘルスケアに関して教育をする機会があるかどうかが問われています。
(9)⑤適切な働き方実現に向けた取り組み
ライフワークバランスについて会社として取り組んでいることを問われています。
(10)⑥コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み
社内のコミュニケーションについてや社内イベントの開催について問われています。
(11)⑦私病等に関する復職・両立支援の取り組み(⑬以外)
私病での通院や休職などからの復職に対して会社として支援している活動があるかを問われています。
(12)⑧保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
健康診断の結果、保険指導の通知が届いた際に指導を受けるよう会社として促しているかを問われています。
(13)⑨食生活の改善に向けた取り組み
食生活に関して従業員に向けて会社が取り組んでいることがあるかを問われています。
(14)⑩運動機会の増進に向けた取り組み
会社として従業員に向けて運動の場や機会を提供しているかどうかを問われています
(15)⑪女性の健康保持・増進に向けた取り組み
女性特有の健康問題や健康課題に関して研修や制度があるかどうかを問われています。
(16)⑫長時間労働者への対応に関する取り組み
長時間労働者に当てはまる従業員に対しての対処や対応またはそうならないための予防策などが問われています。
(17)⑬メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
メンタルヘルスに関しての社内の取り組みや制度があるか、またはメンタルヘルス不調者に対しての対応や対処をしているかを問われています。
(18)⑭感染症予防に関する取り組み
コロナウイルスやインフルエンザに対して予防活動をしているか問われています。
(19)⑮喫煙率低下に向けた取り組み
喫煙率低下のために取り組んでいることがあるか問われています。
(20)受動喫煙対策に関する取り組み
受動喫煙の対策ができているか問われています。
(21)健康経営の取り組みに対する評価・改善
健康経営の取り組みの評価をし、何が課題で何に対して今後戦略的に取り組んでいけないのか把握する必要があります。
7.まとめ
健康経営優良法人の中小規模法人とは当てはまる条件が業種、従業員数または資本金で定められており、認定要件も明確になっています。
そのため、自社の現在地を知ったうえで準備、計画を進めることが必要になります。
また、申請期間から逆算して早めに準備を始めることで、より計画的に健康経営優良法人の認定を目指すことができます。