2024年12月27日
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは?企業の取り組み事例も紹介
SDGs(持続可能な開発目標)の目標14の「海の豊かさを守ろう」の取り組みは、海洋環境の保護と持続可能な利用を目指しています。SDGsの目標14に企業が取り組むことで、海洋環境の保護が進み、持続可能な資源利用が実現し、企業の社会的評価が向上します。
目次
1.SDGsとは?
SDGsとは、国連に加盟する全193か国が達成を目指す国際目標のことです。
Sustainable Development Goalsの略称で、日本語にすると「持続可能な開発目標」です。経済、社会、環境の3つの側面にまたがり、持続可能な社会の実現を目指しています。
「誰ひとり取り残さない」を基本理念に、17の目標と169のターゲットから構成されています。
2.SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」を簡単に解説
目標14「海の豊かさを守ろう」は、持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用することを目指しています。
具体的には、 以下のような課題を解決することを目指しています。
①海洋汚染の防止
プラスチックごみや化学物質などの海洋汚染を削減し、海洋生態系の健康を保つことを目指します。
②海洋資源の持続可能な利用
漁業や観光業など、海洋資源を持続可能な方法で利用し、乱獲や資源の枯渇を防ぎます。
③海洋生態系の保全
サンゴ礁やマングローブなどの重要な海洋生態系を保護し、回復させる取り組みを促進します。
④海洋酸性化の対策
海洋の酸性化を抑制し、その影響を軽減するための科学的研究と技術開発を支援します。
⑤海洋の持続可能な利用のための国際協力
海洋資源の持続可能な利用を実現するために、国際的な協力とパートナーシップを強化します。
そして、この「海の豊かさを守ろう」という目標には、7つのターゲットとAからCまでの具体的な対策4つが設定されています。
14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する**。
**現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。
14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.A 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.B 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.C 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。
引用:国連公式サイト
3.SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」における日本の課題とは?
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に関する日本の主な課題として、以下の点が挙げられます。
①海洋プラスチックゴミの問題
日本のプラスチックゴミの廃棄量はアメリカに次いで世界で2番目に廃棄量が多い国と言われています。
また、海に投棄されたプラスチック製品は波で砕かれたり紫外線により分解されてマイクロプラスチックになり、それを食した魚介が死ぬこともあれば、それらの魚介を食した人間の健康が損なわれます。
②漁業資源の過剰漁獲
日本では、特にマグロや鰹などの大型魚の過剰漁獲が課題となっており、これによって海洋生態系が影響を受けています。持続可能な漁業管理や資源の再生に向けた取り組みが求められています。
③生活排水や工場排水
工場や生活排水は海へ流すのが当たり前になっていますが、生活・工場に含まれる有害物質が海を汚染し海の生態系を破壊したり、海産物を食べる人間の健康を害したり、海への排水は深刻な環境問題を引き起こしています。
これらの課題を克服するために、政府、企業、市民が協力してプラスチックゴミの削減、持続可能な漁業管理、有害排水の適切な処理に取り組むことが必要です。
4.どのような企業が対象となるのか?
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、すべての企業が取り組むことが期待されます。
例えば、プラスチック製品を製造する企業は、リサイクル可能な素材の使用やプラスチック廃棄物の適切な処理に取り組むことが求められます。また、食品加工業や小売業は、持続可能な漁業や水産資源の管理に貢献する取り組みを行うことが重要です。さらに、工場や製造業は、排水処理や環境負荷の低減に取り組むことが期待されます。
つまり、あらゆる業界や業種の企業が、自社の事業活動において海洋環境への影響を最小限に抑えるための取り組みを行うことが求められています。
5.企業の具体的な取り組み事例7選
目標14「海の豊かさを守ろう」に関連して、企業の具体的な取り組み事例を7つ挙げます。
①プラスチック使用量の削減
オフィスや製品の包装材に使用するプラスチックを削減し、代わりに再生可能な素材を使用することで、海洋汚染を減らすことに繋がります。例えば、 オフィスでのプラスチックカップやストローの使用を廃止し、代替品を導入するなどです。
②リサイクルプログラムの設置
使用済みの紙やプラスチック、ガラスなどの資源物を分別し、それぞれの再利用方法に応じて適切に処理します。これにより、廃棄物の削減や再利用の促進が図られ、環境への負荷を軽減することが期待されます。
③環境に配慮した包装材を積極的に使用する
環境に配慮した包装材は、 プラスチック使用量を削減し、廃棄物の削減につながります。例えば、製品の包装材をバイオプラスチックに変更する、リサイクル可能な素材を使用した包装材を導入するなどです。
④海洋保護活動への支援
海洋保護団体やプロジェクトに資金やリソースを提供することで、海洋環境の保全に貢献につながります。例えば、 海洋清掃活動に参加したり、寄付を行うなどです。
⑤有害物質の削減
製造プロセスで使用する化学物質を見直し、環境に優しい代替物質を使用することで、排水中の有害物質を減少させることができます。
⑥排水処理設備の導入・改善
企業は排水処理設備を導入し、排水を適切に処理してから海に放流することが求められます。これにより、有害物質の海洋への流出を防ぎます。
⑦環境認証の取得
ISO14001などの環境マネジメントシステムの認証を取得し、排水管理を含む環境保護活動を体系的に実施することで、持続可能な経営を推進します。
これらの取り組みは、企業がどの業界に属していても実施可能であり、海の豊かさを守るための具体的なアクションとして効果的です。
6.私たちにもできる身近な取り組み事例7選
目標14「海の豊かさを守ろう」に関連して、私たちにもできる身近な取り組み事例を7つ紹介します。
①プラスチック製品の使用を減らす
廃棄されたプラスチックは自然分解されずに海に放出され、海の生態系に深刻な悪影響を及ぼします。ショッピングバッグやストローなど、使い捨てプラスチック製品の使用を控え、再利用可能な製品を選びましょう。
②リサイクルを徹底する
家庭で出るプラスチックゴミやその他のリサイクル可能なゴミを適切に分別し、リサイクルに出すようにしましょう。
③環境に優しい製品を選ぶ
環境に配慮した製品や包装材を使用している企業の商品を選ぶことで、持続可能な消費を促進します。
④ビーチクリーン活動への参加
海岸や河川の清掃活動に参加することで、海に流れ出るごみを減らすことができます。地域のビーチクリーンイベントに参加するか、自主的に清掃活動を行うことが効果的です。
⑤水の使用を見直す
家庭での水の使用を見直し、節水を心がけることで、生活排水の量を減らし、海洋汚染を防ぐことができます。
⑥環境教育に参加する
環境問題に関するセミナーやワークショップに参加し、知識を深めることで、より効果的な取り組みができるようになります。
⑦持続可能なシーフードを選ぶ
漁業資源の過剰漁獲を防ぐために、持続可能な方法で捕獲されたシーフードを選ぶようにしましょう。MSC認証やASC認証のマークがついた製品を選ぶと良いです。
これらの取り組みを通じて、私たち一人ひとりが海の豊かさを守るために貢献することができます。
7.企業がSDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に取り組む上での課題
目標14「海の豊かさを守ろう」に取り組む上での大変なポイントは以下の通りです。
①漁業資源の過剰捕獲
日本は魚介類の消費が高く、持続可能な漁業の確保が急務です。過剰な漁獲が海洋生態系に与える影響は深刻で、資源の枯渇を招く可能性があります。
②海洋汚染
プラスチックごみや化学物質の流出は、海洋生物に悪影響を及ぼし、生態系全体のバランスを崩すことがあります。特に、マイクロプラスチックの問題は深刻で、これが魚介類を通じて人間の食卓にも戻ってくることが懸念されています。
③海洋保護区の設定と管理の難しさ
効果的な海洋保護区の設定とその管理は、多くの利害関係者の調整が必要であり、そのプロセスは複雑です。保護区内での活動制限が地域経済に与える影響や、実際の保護効果の測定も課題となっています。
これらの問題に対処するためには、政府、企業、市民が一体となって取り組む必要があります。
まとめ
SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」では、持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用を目指す重要な目標です。
SDGsの目標14に関して 、プラスチック使用の削減、地域の清掃活動への参加、環境に優しい製品の選択など、日常生活の中で実践できることは多くあります。
また、企業や政府に対しても、海洋保護に向けた政策や取り組みを推進することが不可欠です。